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自分の席にたどり着いた時、パイプ椅子は雨でびしょびしょに濡れていた。
タオルで拭いて、雨対策でパンパンになったカバンから八千代市指定のゴミ袋を出して
そのパンパンのカバンを入れて椅子の下へ。
着席。
空を見上げると、低い雲。
もくもくの灰色。
流れがすごく早い。
どきどき。
でもなんだかふぁーっとした気持ち。
もう少しで6時。
歓声。
しばらくして、自分の席からも剛さんの姿が見えた。
白シャツ。
黒柄ベスト。
黒いパンツ。
ちいさい。
いつもながらちいさい。
一礼。
鍵盤の前に座る。
マイクの位置を合わせる。
「叫ぶ声が また 墜落した」
墜落した、という歌詞とは反対に、あの場所で剛さんの歌声が放たれた最初の瞬間の感動が
帰宅した今でも思い出すだけで胸を震わす。
うわあ。
酔ってるよ〜。
でも、冷静でいることに今は価値を感じないのだ。
酔ってるから。